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令和6年12月 朝坐禅会「指月の会」案内(12月23日朝6時半より)
2024年12月21日而今
しばらく前の下野新聞に、書道展の作品が載っていました。
上記の言葉は掲載された作品の中の一つです。
中々読みにくい言葉ですが「にこん」出典によっては「じこん」とも読みます。
宇都宮の人ならば、老人介護施設の名前ということで聞き覚えがあるかもしれません。
祥雲寺のご近所さんなら、中央警察署の裏に去年出来た人気の割烹料理屋を思い浮かべもするでしょう。
作品の横に一言コメントで、作家水上勉の造語と書かれていましたが、これは古くからある禅語になります。
意味は今この瞬間に真摯に向き合う、今を真剣に生きる、といった意味で用いられます。
数年前にNHKスペシャルでストレス社会の対処法、といった番組がありました。
曰く、ストレスは強まれば脳に器質的な不可逆の損傷をもたらすこともあるので軽視し看過してはいけない。
ストレスとは二つのものが大きな部分を占める。
過去にあった痛手を思い出し反芻して現在にストレスを感じる。
未来にある嫌な事を想定して現在にストレスを感じる。
対処法としてコーピングとマインドフルネスが挙げられる。
コーピングとは自身にとって心良い、息抜きリラックス気分転換できる様々な所作を数十も用意し適時用いてケアをする方法。
マインドフルネスとは仏教で伝えられてきた修行法を一般向けに再編したもの、とのことです。
やっていることはほぼ変わりありません。
今にしっかりと心を定めることです。
私たち生き物には、常に「今」この瞬間しかありません。
過去は過ぎ去って今ここにはなく、
未来は未だ来ないので今ここにはないです。
確かにありますが、それは私たちの頭の中の記憶やイメージでしかない、強いて言うなら虚像です。
今ここに無いものに気を取られて、あまつさえ心を縛られゆがめられることはないのです。
そんな存在しないものよりも、今目の前の人や物事ににきちんと集中し焦点を合わせて向き合うことの方がよほど大切ではないでしょうか?
故に「而今」あれこれ他のことに気を向けず、今この瞬間この自分を真剣に生きる。
類義語を挙げるならば一所懸命や一期一会になるでしょうか。
心の置き方向き合い方の表現として良い言葉です。
多くの方に知っていただけたらよいなぁ、と思います。